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臓器移植後妊娠例でのタクロリムスの先天異常およびSGA発生リスク評価

Title:

Prevalence of major malformations and small for gestational age in newborns of female transplant recipients on tacrolimus-containing regimens during pregnancy

タイトル:

タクロリムス使用臓器移植後妊娠例における出生児の先天大奇形発生率とSGA発生率を評価した研究

著者:

Constantinescu S, Robinson NJ, Marcus MW, Blogg M, Zhu F, Coscia LA, Kliniewski D, Moritz MJ.

ジャーナル:

Am J Transplant. 2025;25(11):2434-2450. doi: 10.1016/j.ajt.2025.07.2472.

KeyPoint

臓器移植はいまや世界的に広く認知された医療として確立している。一方で、移植後には生涯にわたり免疫抑制薬を使用する必要があり、その免疫抑制薬による妊娠や胎児への影響が懸念されることになる。1992年に米国で開設された国際臓器移植後妊娠レジストリー(Transplant Pregnancy Registry International (TPRI))では、患者自身や医療者からの報告に基づいて、免疫抑制薬の使用状況や妊娠転帰に関する情報を収集し、臓器移植後妊娠管理における様々な提言がなされている。タクロリムスは臓器移植後をはじめ、リウマチ疾患など様々な自己免疫疾患で使用される免疫抑制薬であり、妊娠中にも継続使用が必要な場合は少なくない。しかし、特殊な疾患での使用状況にあることなどから、安全性に関する情報はいまだ限局的である。今回、TPRIに登録された腎移植後、肝移植後妊娠例で、タクロリムスでの治療例と他の免疫抑制薬での治療例における児の先天異常などの転帰について評価している。児の先天異常に関しては、催奇形性が明らかなミコフェノール酸製剤(MPA)使用例を除外して解析している。
【目的】臓器移植後妊娠においては、免疫抑制薬の胎児への影響が懸念される。タクロリムスへの子宮内暴露による先天大奇形発生とSGA発生リスクを評価することを目的とする。

【方法】TPRIに1991年~2020年に登録された臓器移植後妊娠例のうち、腎移植と肝移植後妊娠例の生産児において、免疫抑制薬の使用状況や妊娠転帰が判明している例について、タクロリムス曝露群と非曝露群(他の免疫抑制薬使用群、一部に免疫抑制薬を使用していない例も含む)、先天異常発生およびSGA発生を比較した。先天異常発生の評価において、MPAを受胎6週間前に中止した症例を対照とした。また、TPRIに登録された時点では妊娠転帰が明らかでなかった前向き登録症例と登録時点で転機が明らかであった後ろ向き登録症例のそれぞれについて検討を行った。

【結果】妊娠初期にタクロリムスを使用しており、受胎の6週前以降にはMPAを使用していないことが明らかな母親の出生児で先天大奇形発生について評価した。前向きに登録された腎移植と肝移植例の生産350児の先天大奇形発生率は、タクロリムス曝露群2.0%(6/297)、非曝露群(他の免疫抑制薬を使用)1.9%(1/53)であった。後ろ向きに登録された腎移植と肝移植例の生産1706児では、タクロリムス群 4.7%(24/509)、非曝露群3.1%(37/1197)であった。前向き後ろ向き登録例全体で評価し、両群間で統計的に有意な差はみられなかった(aOR:1.10(95% CI, 0.68, 1.81))。曝露群で見られた先天大奇形には特定のパターンはみられなかった。
SGAについて、前向きに登録された腎移植例と肝移植症例の生産411児のSGA発生率は、タクロリムス群17.9%、非曝露群32.2%であり、後ろ向きに登録された腎移植例と肝移植例の生産1837児ではタクロリムス群 18.1%、非曝露群23.5%であった。前向き後ろ向き登録例全体で評価し、タクロリムス群でSGA発生率の低下がみられた(aOR0.795% CI, 0.57, 0.87))。

【結論】今回の臓器移植(腎移植・肝移植)後妊娠例における検討では、妊娠中のタクロリムス使用による児の先天異常発生リスクの増加はみられなかった。さらに、タクロリムスでの治療群では、他の免疫抑制薬での治療群と比較して、SGA発生率は低かった。

【参考文献】
1.Moritz MJ, et al. Transplant Pregnancy Registry International. 2024, Annual report, Philadelphia, PA, 2025.
2.一般社団法人 日本移植学会 「臓器移植後妊娠・出産ガイドライン策定委員会」 臓器移植後妊娠・出産ガイドライン2021 pp. 117-119

(文責:肥沼 幸)