文献紹介
Featured Research

コルヒチンの妊孕性、妊娠、授乳への影響に関するエビデンス

Title:

Safety of colchicine on fertility, pregnancy, and lactation: a systematic review and meta-analysis informing the EULAR/PReS recommendations for familial Mediterranean fever

タイトル:

コルヒチンの妊孕性、妊娠、授乳における安全性:家族性地中海熱に対するEULAR/PReSの推奨を裏付けるシステマティックレビューとメタアナリシス

著者:

Otón T, Sağ E, Carmona L, Ozen S.

ジャーナル:

Ann Rheum Dis.2025;28:S0003-4967(25)00210-9. doi: 10.1016/j.ard.2025.02.005. Online ahead of print.

KeyPoint

コルヒチンを服用している家族性地中海熱の患者において、コルヒチン投与による生殖器系および子孫への重大な合併症は認められなかった。

EULAR/PReS(欧州リウマチ学会と小児リウマチ欧州協会)の家族性地中海熱の管理に関する推奨2024年において、このシステマティックレビューに基づき10番目の推奨文として、コルヒチンは受胎中(妊娠を試みている期間あるいは受精が起こる可能性のある時期から妊娠が確定するまでの期間)、妊娠中、授乳中も継続されるべきであると記載された(Ann Rheum Dis.2025 Apr 9:S0003-4967(25)00084-6. doi:10.1016/j.ard.2025.01.028. Online ahead of print)。
【目的】家族性地中海熱(FMF;familial Mediterranean fever)患者の治療におけるコルヒチンの妊孕性、妊娠、授乳への影響に関するエビデンスをまとめる。

【方法】2名の査読者と1名の方法論の専門家がシステマティックレビューを実施。FMFの専門家と共同で、プロトコールとPICOtの質問を作成した。PubMedを介したMedline、Embase、Cochrane Libraryを用いて、2023年8月23日までの文献を検索した。FMFにおけるコルヒチンの生殖や授乳に関する安全性に焦点を当て、少なくとも5名以上の患者を対象としたすべての臨床試験、コホート研究、または症例シリーズが対象となった。研究におけるバイアスのリスクは、Newcastle-Ottawa Scaleを用いて評価した。少なくとも2件の均質な研究に対して、Mantel-Haenszel法を用いた固定効果モデルによるメタアナリシスを実施し、統合されたリスク比(RR)と95%信頼区間(CI)を算出した。

【結果】全体で25件の研究が解析対象となったが、その質は中程度から低程度であった。FMFにおけるコルヒチン投与による流産または胎児死亡の相対リスクは0.87(95%信頼区間0.67~1.12)で、31%の異質性を示した。曝露群における先天異常の発生率は0.6%から4.0%の範囲で、コルヒチンに曝露されていないFMFの女性における先天異常の発生率と大きな差はなく、ほぼ同程度であった。妊孕性に関しては、コルヒチン曝露群と非曝露群、そして女性と男性(精子評価)の間で明らかな差は認められなかった。母乳育児に関するデータが報告された研究は1件のみで、曝露群と非曝露群の乳児発育に差は見られなかった。

【結論】コルヒチンは、生殖に関する安全性において、リスクとベネフィットのバランスが良好であると考えられる。理想的には、特に男性の妊孕性に関して、より質の高い研究が行われるべきである。

【参考文献】

  1. Antirheumatic drugs in reproduction, pregnancy, and lactation: a systematic literature review informing the 2024 update of the EULAR recommendations. Ann Rheum Dis. 2025 Apr 15:S0003-4967(25)00814-3.doi: 10.1016/j.ard.2025.02.021. Online ahead of print.


(文責:藤原 弘士)