抗リン脂質抗体症候群の診断基準に当てはまらないaPL陽性症例の管理は?
Title:
Pregnancy Outcomes in Non-Criteria Obstetric Antiphospholipid Syndrome: Analysis of a Cohort of 91 Patients
タイトル:
産科的APSの診断基準を満たさない症例の妊娠転帰;91例の後ろ向きコホート研究
著者:
Beça S, Baños N, Borrell M, Ruiz-Ortiz E, Pérez-Isidro A, Cervera R, Reverter JC, Tàssies D, Espinosa G.
ジャーナル:
J Clin Med 2024;13(24):7862. doi: 10.3390/jcm13247862
KeyPoint
抗リン脂質抗体症候群の診断基準は2023年のACR/EULARのAPS分類基準で改定されました。以前の基準である「2006年Sapporo基準シドニー改変」と比較し、診断時血液データ(血小板減少)や心弁膜症、微小血管障害などのスコアが高く、習慣流産などの産科特異的な所見のスコアが低く設定されています。新基準でAPSの確定診断がより困難になる中で、我々が実臨床で出会う『APSと診断は出来ないが産科的既往のあるaPL陽性症例』において、どの程度産科的リスクがあり、どのように管理を行うべきか、は重要な課題です。
【目的】診断基準(2006年Sapporo基準シドニー改変)を満たさないNC-OAPS(Non-Criteria Obstetric Antiphospholipid Syndrome)群患者の臨床的及び検査的特徴、及び妊娠転帰や治療指針は明確に示されておらず、産科的APS(OAPS)と比較し検討することを目的とした。
【方法】APO(Adverse pregnancy outcomes)妊娠転帰不良、及びaPL陽性で三次病院の高度周産期センターに紹介された女性の後ろ向きコホート研究である。OAPS群はsydney分類基準を満たす産科APS患者、NC-OAPS群は①基準aPL陽性を有するがOAPSの臨床的sydney基準を満たさない症例、②臨床的sydney基準+非基準aPL力価を有する症例、③非基準産科的既往+非基準aPL力価を有すると分類された患者であった。臨床的および検査的特徴、管理、およびその後の妊娠転帰について比較した。
【結果】NC-OAPS群が91例、OAPS群が16例であった。両群間で人口統計学的特徴に差は無かった。臨床所見ではOAPS群では妊娠後期の転帰不良(流産、死産)であった一方、NC-OAPS群は原因不明の繰り返す不妊であった。検査所見ではOAPS群では抗β2GP1陽性、LAC陽性及び複数aPL陽性が多く、NC-OAPS群では抗カルジオリピン抗体陽性が多く、LAC陽性は少なく、単独aPL陽性が多かった。妊娠中の治療について、低用量アスピリン(LDA)及び低分子ヘパリン(LMWH)の併用による治療は両群間で同程度行われており、生児獲得率に差異は認めなかった。
【結論】NC-OAPSの女性にOAPSの標準治療(LDA+LMWH)と同等(NC-OAPSではLMWHは予防量)の治療を行った場合、OAPSと同等の良好な妊娠転帰を示した。
【参考文献】
1.Barbhaiya M, Zuily S, etal. 2023 ACR/EULAR antiphospholipid syndrome classification criteria. Ann Rheum Dis. 2023. Aug 28:ard-2023-224609. doi: 10.1136/ard-2023-224609
【方法】APO(Adverse pregnancy outcomes)妊娠転帰不良、及びaPL陽性で三次病院の高度周産期センターに紹介された女性の後ろ向きコホート研究である。OAPS群はsydney分類基準を満たす産科APS患者、NC-OAPS群は①基準aPL陽性を有するがOAPSの臨床的sydney基準を満たさない症例、②臨床的sydney基準+非基準aPL力価を有する症例、③非基準産科的既往+非基準aPL力価を有すると分類された患者であった。臨床的および検査的特徴、管理、およびその後の妊娠転帰について比較した。
【結果】NC-OAPS群が91例、OAPS群が16例であった。両群間で人口統計学的特徴に差は無かった。臨床所見ではOAPS群では妊娠後期の転帰不良(流産、死産)であった一方、NC-OAPS群は原因不明の繰り返す不妊であった。検査所見ではOAPS群では抗β2GP1陽性、LAC陽性及び複数aPL陽性が多く、NC-OAPS群では抗カルジオリピン抗体陽性が多く、LAC陽性は少なく、単独aPL陽性が多かった。妊娠中の治療について、低用量アスピリン(LDA)及び低分子ヘパリン(LMWH)の併用による治療は両群間で同程度行われており、生児獲得率に差異は認めなかった。
【結論】NC-OAPSの女性にOAPSの標準治療(LDA+LMWH)と同等(NC-OAPSではLMWHは予防量)の治療を行った場合、OAPSと同等の良好な妊娠転帰を示した。
【参考文献】
1.Barbhaiya M, Zuily S, etal. 2023 ACR/EULAR antiphospholipid syndrome classification criteria. Ann Rheum Dis. 2023. Aug 28:ard-2023-224609. doi: 10.1136/ard-2023-224609
(文責:平松 ゆり)