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妊娠授乳関連骨粗鬆症(PLO)に対する治療介入は?

Title:

Comparative Effectiveness of Therapeutic Interventions in Pregnancy and Lactation-Associated Osteoporosis: A Systematic Review and Meta-analysis

タイトル:

妊娠授乳関連骨粗鬆症に対する治療的介入の比較有効性: 系統的レビューとメタアナリシス

著者:

Anagnostis P, Lampropoulou-Adamidou K, Bosdou JK, Trovas G, Galanis P, Chronopoulos E, Goulis DG, Tournis S.

ジャーナル:

J Clin Endocrinol Metab. 2024;109(3):879-901. doi: 10.1210/clinem/dgad548.

KeyPoint

妊娠授乳関連骨粗鬆症(PLOPregnancy- and lactation-associated osteoporosis)をご存知でしょうか? 妊娠や授乳に伴う骨粗鬆症のことです。PLOが原因で骨折を起こる方々がおられます。決して多くの方が発症するわけではないですが、妊娠中や産後に発症つまり骨折することで、骨折による疼痛のため、これから出産や育児をするといったタイミングでADLが大きく損なわれます。母体の健康管理の1つに“骨”という臓器も一緒に考えてみてください。

PLOの椎体骨折をまとめた既報では、173例のうち初回妊娠は149例が最多で複数回妊娠よりも多く、妊娠後期3か月と産後3か月以内の発症が多い、また、多く骨折した椎体レベルはTh12L1L2で全体の約3割を占めたとされています1)PLOについて原因や危険因子など不明な点が多く、最適な治療についても確立していません。

今回、PLOに対する治療介入を比較した統計学的レビューが報告されましたので、ご紹介いたします。
【背景】 妊娠・授乳期に関連した骨粗鬆症(PLO)に最適な治療方法は確立していない。

【目的】 PLO患者における骨密度(BMD)と骨折リスクに対するさまざまな治療介入の効果について、入手可能な最善のエビデンスを系統的にレビューする。

【方法】 20221220日までのPubMed/Scopusデータベースを用いで包括的検索を行った。データは加重平均差(WMD)と95CIで表記した。異質性についてはI2指数を用いた。骨粗鬆症治療薬を受けたPLO女性を対象に実施された研究を用いた。骨粗鬆症の二次的原因を有する女性、または一過性の股関節骨粗鬆症を有する女性を含む研究は除外した。データ抽出は2人の研究者が独立して行った。

【結果】 65研究が解析された(n = 451[追跡期間6264ヵ月;年齢範囲1942歳])。骨折は授乳期(17か月)に404例(90.4%)に発生、妊娠中は38例(8.5%)(大多数は妊娠第3期、特に89か月)に発生し、出産直後は5例(1.1%)で発生した(患者4例のデータはない)。カルシウム/ビタミンDCaD)、ビスホスフォネート、テリパラチドによる腰椎(LSBMDの増加は、12ヵ月時点でそれぞれ2.0%~7.5%、5.0%~41.5%、8.0%~24.4%、24ヵ月時点でそれぞれ11.0%~12.2%、10.2%~171.9%、24.1%~32.9%であった。大腿骨頸部(FNBMDは、CaD6.1%、ビスホスフォネートおよびテリパラチド(18~24カ月)でそれぞれ0.7%~18%、8.4%~18.6%増加した。メタ解析は2つの介入研究に対してのみ行われた。テリパラチドはCaDよりもLSFNBMDを大きく増加させた(WMD 11.5%、95CI 4.918.0%、I2 50.9%、および5.4%、95CI 1.29.6%、I2 8.1%)。

【結論】 異質性が高いため、確実な比較データが不足しており、PLO女性における最適な治療介入について安全な結論を出すことはできないと著者は述べている。今後、BMDと骨折リスクに対する治療介入の効果を評価するためにはランダム化の比較試験が必要で、さらには閉経までの長期間で生活の質も含めた前向き研究で評価する必要がある。

【参考文献】

1)Ying Q et, al. BMC Musculoskelet Disord. 2021 Nov 3;22(1):926.

 

(文責:辻 聡一郎)