JAK阻害薬フィルゴチニブの男性妊孕性への影響
Title:
Effects of filgotinib on semen parameters and sex hormones in male patients with inflammatory diseases: results from the phase 2, randomised,double-blind,placebo-controlled MANTA and MANTA-Ray studies.
タイトル:
炎症性疾患の男性患者におけるフィルゴチニブが精液パラメータおよび性ホルモンに与える影響:第2相ランダム化二重盲検プラセボ対照MANTAおよびMANTA-RAy研究の結果
著者:
Walter Reinisch, Wayne Hellstrom, Radboud J.E.M. Dolhain et al.
ジャーナル:
Ann Rheum Dis 2023; 82:1049–1058.
KeyPoint
フィルゴチニブは、ラットおよびイヌを対象とした非臨床試験において、精巣毒性が確認されているが作用機序は明らかではない1)。一方で、他のJAK阻害薬には非臨床の精巣毒性に関する報告はない。このような背景から、ヒトの男性に対してフィルゴチニブが精巣毒性を有するか調べることは臨床的に意義が高い。今回紹介する論文において炎症性疾患(炎症性腸疾患、リウマチ性疾患)を有する男性を対象にフィルゴチニブの投与が精液パラメータや性ホルモンに与える影響の評価がなされた。
【目的】MANTAおよびMANTA-RAy研究の目的は、ヤヌスキナーゼ1選択的阻害剤であるフィルゴチニブが、炎症性疾患を有する男性患者の精液パラメータおよび性ホルモンに与える影響を評価することである。
【方法】21~65歳の炎症性腸疾患またはリウマチ性疾患患者を対象としたランダム化二重盲検プラセボ対照試験。対象者は13週間にわたり1日1回フィルゴチニブ200mgまたはプラセボを投与され、主要評価項目は精子濃度がベースラインから50%以上減少する患者の割合であった。精液量、精子運動率、正常形態率、精子総数、および性ホルモン(LH、FSH、インヒビンB、総テストステロン)の変化も評価された。
【結果】 631名がスクリーニングを受け、248名が試験に参加した。13週目において、精子濃度がベースラインから50%以上減少した患者の割合は、フィルゴチニブ群で6.7%(8/120例)、プラセボ群で8.3%(10/120例)であり、その差は-1.7%(95%信頼区間:-9.3~5.8)で統計的な有意差は認められなかった。
さらに、精液パラメータ全般(精子濃度、総精子数、精子運動率、正常形態率、精液量)についての詳細な評価においても、フィルゴチニブ群とプラセボ群の間で臨床的または統計的に有意な変化は見られなかった。
性ホルモン(テストステロン、FSH、LH、インヒビンB)についても同様に、13週目までの治療期間中において、両群で臨床的に重要な変化は観察されなかった。
Reversibility(精液パラメータが治療中に減少した場合、観察期間中にベースライン値の50%以上に回復するかどうか)に関する評価では、フィルゴチニブ群とプラセボ群のいずれにおいても大部分の患者が回復を示した。治療中に精子濃度が50%以上減少した患者のほとんどが、治療終了後の52週以内に回復し、精巣機能の回復可能性が確認された。一部の患者では回復が遅れる例も報告されましたが、その割合は非常に小さく、両群間で大きな違いは見られなかった。
【結論】フィルゴチニブ200mgの13週間の投与は、精液パラメータや性ホルモンに測定可能な影響を与えず、安全性プロファイルも良好であることが確認された。
【参考文献】
1)フィルゴチニブインタビューフォーム 該当部分:反復投与毒性試験(ラット、イヌ)
https://www.jyseleca.jp/-/media/Files/Filgotinib/product/basic/JYS_IF_07.pdf?sc_lang=ja-JP&hash=3A49D6F4787C8D8121650D4B0F3D299F
【方法】21~65歳の炎症性腸疾患またはリウマチ性疾患患者を対象としたランダム化二重盲検プラセボ対照試験。対象者は13週間にわたり1日1回フィルゴチニブ200mgまたはプラセボを投与され、主要評価項目は精子濃度がベースラインから50%以上減少する患者の割合であった。精液量、精子運動率、正常形態率、精子総数、および性ホルモン(LH、FSH、インヒビンB、総テストステロン)の変化も評価された。
【結果】 631名がスクリーニングを受け、248名が試験に参加した。13週目において、精子濃度がベースラインから50%以上減少した患者の割合は、フィルゴチニブ群で6.7%(8/120例)、プラセボ群で8.3%(10/120例)であり、その差は-1.7%(95%信頼区間:-9.3~5.8)で統計的な有意差は認められなかった。
さらに、精液パラメータ全般(精子濃度、総精子数、精子運動率、正常形態率、精液量)についての詳細な評価においても、フィルゴチニブ群とプラセボ群の間で臨床的または統計的に有意な変化は見られなかった。
性ホルモン(テストステロン、FSH、LH、インヒビンB)についても同様に、13週目までの治療期間中において、両群で臨床的に重要な変化は観察されなかった。
Reversibility(精液パラメータが治療中に減少した場合、観察期間中にベースライン値の50%以上に回復するかどうか)に関する評価では、フィルゴチニブ群とプラセボ群のいずれにおいても大部分の患者が回復を示した。治療中に精子濃度が50%以上減少した患者のほとんどが、治療終了後の52週以内に回復し、精巣機能の回復可能性が確認された。一部の患者では回復が遅れる例も報告されましたが、その割合は非常に小さく、両群間で大きな違いは見られなかった。
【結論】フィルゴチニブ200mgの13週間の投与は、精液パラメータや性ホルモンに測定可能な影響を与えず、安全性プロファイルも良好であることが確認された。
【参考文献】
1)フィルゴチニブインタビューフォーム 該当部分:反復投与毒性試験(ラット、イヌ)
https://www.jyseleca.jp/-/media/Files/Filgotinib/product/basic/JYS_IF_07.pdf?sc_lang=ja-JP&hash=3A49D6F4787C8D8121650D4B0F3D299F
(文責:後藤 美賀子)