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SLE合併妊娠では人工早産だけでなく自然早産の頻度も高い

Title:

Systemic lupus erythematosus is associated with an increased frequency of spontaneous preterm births: systematic review and meta-analysis

タイトル:

SLEは自然早産の頻度増加と関連する:システマティックレビューとメタ解析

著者:

Carolien N H Abheiden, Birgit S Blomjous, Ciska Slaager, Anadeijda J E M C Landman, Johannes C F Ket, Jane E Salmon, Jill P Buyon, Martijn W Heymans, Johanna I P de Vries, Irene E M Bultink, Marjon A de Boer

ジャーナル:

Am J Obstet Gynecol. 2024 Oct;231(4):408-416.e21. doi:10.1016/j.ajog.2024.03.010.

KeyPoint

Systemic lupus erythematosus (SLE)合併妊娠ではしばしば妊娠高血圧腎症、胎児発育不全、早産などを合併する。早産はSLE合併妊娠における最も頻度が高い合併症の一つであり、その割合は30-40%と一般妊娠での10%と比較して高率である。しかしSLE合併妊娠で早産が多いことは、妊娠高血圧腎症、胎児発育不全やSLEの病性の悪化に伴って人為的に妊娠を終結させる人工早産だけでは説明がつかない。妊娠満期以前に起こる子宮収縮や前期破水に起因する自然早産の原因は不明で、SLE合併妊娠における頻度も既報からでは明らかではない。本研究ではSLE合併妊娠における自然早産および人工早産の割合を明らかにすることを目的とした。結果、SLE合併妊娠における21件の論文8157妊娠が対象となり、平均して妊娠の31%が早産となった。早産の内訳としては全妊娠の14%が自然早産、16%が人工早産であった。驚くことに、SLE合併妊娠での高い早産割合のうちの半数は自然早産に伴うものであった。また自然早産のうち、前期破水から自然早産に至ったのは約半数であり、一般妊娠での自然早産に占める前期破水の割合の約2倍であった。一般集団における自然早産のリスクとしては、早産既往、子宮頸管長短縮、喫煙など多因子要因が挙げられるが本研究ではこれらの因子については検討されていない。今後、SLE合併妊娠における自然早産の原因やリスク因子を究明し、自然早産を減らすような治療や介入方法を探求していくことが課題である。
【目的】早産は、SLE合併妊娠において最も頻度の高い合併症の一つである。妊娠高血圧症候群や胎児発育不全による早産の割合が高いことはよく知られている。しかし自然早産のリスクはあまり認識されていない。本研究では、SLE合併妊娠における自然早産および人工早産の割合を明らかにすることを目的とした。

【方法】SLE合併妊娠における自然早産と人工早産の割合について報告しているすべての論文を網羅した。また早産(妊娠37週未満の出産)と早産のタイプ(自然早産または人工早産)について言及した論文を対象とした。自然早産とは、妊娠満期以前の子宮収縮または前期破水により早産に至ったものと定義した。分娩時期に関する情報がなく前期破水のみが記載されている場合は除外した。新しいデータを用いた原著論文のみを対象とした。

【結果】SLE合併妊娠における21件の論文、8157妊娠が対象となった。平均して妊娠の31(95%予測区間 0.14-0.50)が早産となり、早産の内訳としては全妊娠の14(95%予測区間 0.04-0.27)が自然早産、16(95%予測区間 0.03-0.35)が人工早産であった。前期破水については7つの文献でのみ記載されており、平均して自然早産の51(95%予測区間 0.00-1.00)が前期破水で始まっていた。1つの研究では、前期破水11人中8人(73%)が妊娠中にプレドニゾンを使用しており、研究集団全体では前期破水63人中30人(48%)がプレドニゾンを使用していた。

【結論】SLE合併妊娠での早産は妊娠高血圧腎症や胎児発育不全、SLEの病性悪化に伴う人工早産によるものが多いと考えられてきた。しかし今回の大規模集団での検討で、SLE合併妊娠では自然早産と人工早産の割合が同程度であることが明らかとなった。

【参考文献】

  1. Blencowe H, Cousens S, Oestergaard MZ, et al. National, regional, and worldwide esti- mates of preterm birth rates in the year 2010 with time trends since 1990 for selected countries: a systematic analysis and implications. Lancet 2012;379:2162–72.

  2. Romero R, Dey SK, Fisher SJ. Preterm la- bor: one syndrome, many causes. Science 2014;345:760–5.

  3. Goldenberg RL, Culhane JF, Iams JD, Romero R. Epidemiology and causes of preterm birth. Lancet 2008;371:75–84.


(文責:岡﨑 有香)