文献紹介
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リウマチ性疾患を罹患している女性の産後うつ病発症率は、非罹患女性と比較し高い

Title:

Postpartum Depression in Reproductive-Age Women With and Without Rheumatic Disease: A Population-Based Matched Cohort Study

タイトル:

リウマチ性疾患罹患女性の産後うつ病発症についての検討 :A Population-Based Matched Cohort Study

著者:

Divya Shridharmurthy, Kate L. Lapane, Anthony P. Nunes, Jonggyu Baek, Michael H. Weisman, Jonathan Kay and Shao-Hsien Liu

ジャーナル:

The Journal of Rheumatology. 2023;50(10):1287-1295. doi:10.3899/jrheum.2023-0105

KeyPoint

本邦での周産期うつ病の発症頻度は11-16%程度とされている1。近年慢性疾患女性の妊娠機会は増加しているが、慢性疾患罹患女性は自身の疾患活動性のこと、子供への影響、投薬されている薬剤の児への影響、育児への不安感など、妊娠計画段階から妊娠中、産後と様々な不安やストレスを抱えながら過ごしている場合が多いため、周産期のストレスケアは大変重要である。本研究ではリウマチ性疾患女性の産後うつ病の発症が非疾患女性比較群と比べ有意に高いとの結果であった。これまで、リウマチ性疾患患者の抑うつ障害の合併は有意に多数であるとの報告もある2。これらの慢性疾患を有する患者の妊娠サポートを行う場合、我々は医療ケアチーム全体で内科的疾患や妊娠経過のみならずプレコンセプションケアの段階からうつ病の有無を確認する事も含め、メンタルヘルスサポートを行っていく事が望まれる。
【目的】脊椎関節炎、乾癬性関節炎、関節リウマチ罹患女性と非リウマチ性疾患女性との産後うつ病発症率の比較を行う。

【方法】2013年から 2018 年の IBM MarketScan Commercial Claims and Encounters データベースを使用した後方視的研究である。患者選定は以下の通りである。

55歳以下の女性で1)1週間以上経過した2回の診察で脊椎関節炎、強直性脊椎炎、関節リウマチと診断された。2)リウマチ専門医による外来診察を受診している。3)リウマチ性疾患への抗リウマチ薬もしくは生物学的製剤の投薬を一回以上施行されている。4)他疾患で入院中にリウマチ性疾患と診断された。それぞれの症例は①出産時の母体年齢、②うつ病の既往歴、③出産前のうつ病罹期間、の条件で非リウマチ性疾患女性比較群とマッチングされた。Cox frailty比例ハザードモデルにより、リウマチ性疾患患者群において、マッチさせた比較群と比較して1年以内に産後うつ病が発症する粗ハザード比、調整ハザード比(aHR)、および95CIを推定した。

【結果】全体として、リウマチ性疾患患者群2667人と、比較群10,668人が組み入れられた。追跡期間中央値(日)は、リウマチ性疾患コホートで256日(IQR 93-366)、マッチさせた比較群で265日(IQR 99-366)であった。産後うつ病の発症率はリウマチ性疾患コホート群では比較群と比較し有意に上昇していた(リウマチ性疾患コホート群:17.2%、非患者比較群:12.8%:aHR 1.2295CI 1.09-1.36)。

【結論】産後うつ病は、脊椎関節炎、強直性脊椎炎、関節リウマチを有する生殖年齢の女性において、リウマチ性疾患を有さない女性と比較して有意に高い。 

【参考文献】

1Tokumitsu,K, Norio Sugawara, et al . Prevalence of perinatal depression among Japanese women: a meta-analysis. Ann Gen Psychiatry 2020;19:41.

2Skinner-Taylor CM, Perez-Barbosa L, Corral-Trujillo ME, et al.Anxiety and depression in reproductive age women with rheumatic diseases. Rheumatol Int 2020;40:1433-1438.

(文責:平松 ゆり)