地震と周産期予後との関連性に関して
Title：
Association between earthquakes and perinatal outcomes: A systematic review and meta-analysis
タイトル：
地震と周産期予後との関連性:a systematic review and meta-analysis
著者：
Wada Y, Watanabe J, Yamamoto N, Kubota T, Kamijo K, Hirano D, Takahashi H, Fujiwara H.
ジャーナル：
Int J Gynaecol Obstet. 2024 Jan 17. doi: 10.1002/ijgo.15369.
KeyPoint
地震大国の日本において、妊婦が被災するケースは少なくないです。2011年の東日本大震災、直近では2024年初めの能登半島地震、今後も南海トラフや首都直下型地震の発生の可能性が指摘される中で、災害弱者である妊産婦が被災した場合の母体・胎児への影響に関して理解しておくことは大切です。本研究では地震と早産や低出生体重などの周産期予後は地震前後で変わらない可能性が示されていますが、サブグループ解析では、アジア地域の地震後では早産が増加する可能性があることが示されています。また他の論文では胎児期や乳児期に被災すると成人期の高血圧と糖尿病のリスクが増加するとの報告１）や、地震当時および地震直後に妊娠していた一部の女性では、妊娠高血圧症候群、呼吸器疾患、精神疾患などの妊娠合併症が増加した2)との報告もあります。地震の周産期予後への影響を理解する上では、その地域の特徴や被害範囲・状況などに関するデータなども含めた更なる研究が必要だと考えますが、今わかる範囲のエビデンスを理解しておくことは重要です。
【背景】地震と周産期の悪影響との関連性を示す証拠は限られている。
【目的】地震と早産や低出生体重などの周産期転帰との関連性を評価すること。
【検索戦略】2023年2月9日に、MEDLINE、Cochrane Central Register of Controlled Trials、EMBASE、World Health Organization International Clinical Trials Platform Search Portal、ClinicalTrials.gov を使用して研究検索を行った。
【選択基準】 被災地域に住む女性の地震と周産期転帰との関連性を評価したBefore-after研究を含めた。
【データの収集と分析】 2人の独立したレビュー担当者がデータを抽出した。変量効果モデルを使用してプールされたオッズ比を計算した。アジア人などのサブグループの結果も分析した。エビデンスの確実性は、GRADE(Grading of Recommendations, Assessment, Development and Evaluation)システムで評価した。
【主な結果】 13件の研究に2,607,405人の女性が含まれた。 地震は早産（9件の研究、1,761,760人の参加者：OR 1.10、95％CI：0.98-1.24、証拠の確実性が低い）や低出生体重（7件の研究、1,753,891人の参加者：OR 1.10、 95% CI：0.94-1.28、エビデンスの低い確実性)。 サブグループ解析では、アジアの集団における早産の増加に地震が関連している可能性があることが示された(OR 1.44、95%CI：1.07-1.95)が、他の地域では明らかではなかった(OR 0.93、95%CI：0.83-1.05)。
【結論】 周産期の転帰は地震の後でも変わらない可能性がある。地域の特性の評価と組み合わせて、地震と周産期転帰との関連についてのさらなる研究が必要である。
【参考文献】
1) Na Li, Lu-Lu Yu, Xiao-Chuan Zhao, et al. Perinatal exposure to earthquake stress increases the risks of hypertension and diabetes in subsequent adult life: A cross-sectional study. J Clin Hypertens. 2020 Dec;22(12):2354-2360. doi: 10.1111/jch.14083. Epub 2020 Oct 30.
2) Hyo Kyozuka, Tsuyoshi Murata, Shun Yasuda, et al. The Effects of the Great East Japan Earthquake on Perinatal Outcomes: Results of the Pregnancy and Birth Survey in the Fukushima Health Management Survey. J Epidemiol. 2022; 32(Suppl XII): S57-S63. doi: 10.2188/jea. JE20210444.
【目的】地震と早産や低出生体重などの周産期転帰との関連性を評価すること。
【検索戦略】2023年2月9日に、MEDLINE、Cochrane Central Register of Controlled Trials、EMBASE、World Health Organization International Clinical Trials Platform Search Portal、ClinicalTrials.gov を使用して研究検索を行った。
【選択基準】 被災地域に住む女性の地震と周産期転帰との関連性を評価したBefore-after研究を含めた。
【データの収集と分析】 2人の独立したレビュー担当者がデータを抽出した。変量効果モデルを使用してプールされたオッズ比を計算した。アジア人などのサブグループの結果も分析した。エビデンスの確実性は、GRADE(Grading of Recommendations, Assessment, Development and Evaluation)システムで評価した。
【主な結果】 13件の研究に2,607,405人の女性が含まれた。 地震は早産（9件の研究、1,761,760人の参加者：OR 1.10、95％CI：0.98-1.24、証拠の確実性が低い）や低出生体重（7件の研究、1,753,891人の参加者：OR 1.10、 95% CI：0.94-1.28、エビデンスの低い確実性)。 サブグループ解析では、アジアの集団における早産の増加に地震が関連している可能性があることが示された(OR 1.44、95%CI：1.07-1.95)が、他の地域では明らかではなかった(OR 0.93、95%CI：0.83-1.05)。
【結論】 周産期の転帰は地震の後でも変わらない可能性がある。地域の特性の評価と組み合わせて、地震と周産期転帰との関連についてのさらなる研究が必要である。
【参考文献】
1) Na Li, Lu-Lu Yu, Xiao-Chuan Zhao, et al. Perinatal exposure to earthquake stress increases the risks of hypertension and diabetes in subsequent adult life: A cross-sectional study. J Clin Hypertens. 2020 Dec;22(12):2354-2360. doi: 10.1111/jch.14083. Epub 2020 Oct 30.
2) Hyo Kyozuka, Tsuyoshi Murata, Shun Yasuda, et al. The Effects of the Great East Japan Earthquake on Perinatal Outcomes: Results of the Pregnancy and Birth Survey in the Fukushima Health Management Survey. J Epidemiol. 2022; 32(Suppl XII): S57-S63. doi: 10.2188/jea. JE20210444.
（文責：菊地 範彦）