妊娠中の運動は、妊娠糖尿病と妊娠高血圧症候群の発症を抑える可能性があります!
Title:
Exercise during pregnancy for preventing gestational diabetes mellitus and hypertensive disorders: An umbrella review of randomized controlled trials and an updated meta-analysis
タイトル:
妊娠糖尿病と妊娠高血圧症候群を予防するためのマタニティスポーツ:ランダム化比較試験の包括的レビューと最新のメタ分析
著者:
Martínez-Vizcaíno V, Sanabria-Martínez G, Fernández-Rodríguez R, Cavero-Redondo I, Pascual-Morena C, Álvarez-Bueno C, Martínez-Hortelano JA.
ジャーナル:
BJOG. 2023;130(3):264-275. doi: 10.1111/1471-0528.17304.
KeyPoint
妊娠したら何かというと「安静にしてくださいね」と言いがちではありませんか?この研究は、マタニティスポーツの妊娠糖尿病(GDM)と妊娠高血圧症候群(HDP)発症予防効果についての検討をおこなったアンブレラレビューです。アンブレラレビューというのは、これまでに発表された複数のメタ解析をさらに統合して解析した研究であり、2015年ごろから報告が増えてきた解析方法になります。スポーツは慢性炎症や酸化ストレス、血管内皮障害を軽減する作用があり、一般成人の糖尿病や高血圧の予防・治療に有効であることはよく知られています。妊婦についてのアンブレラレビューの結果、GDM/HDPの発症は妊娠中の継続した運動習慣により低下していました。ハイリスク妊婦についてのプレコンセプションケアの際、食事だけではなく運動療法についても勧めてみてはいかがでしょうか?(日本の妊婦スポーツの安全管理基準https://www.rinspo.jp/files/proposal_11-1.pdfも参照してみてください)
【目的】日本研究の目的は、包括的レビューを通じて、妊娠中の単独運動介入が妊娠糖尿病(GDM)および妊娠高血圧症候群(HDP)に及ぼす効果の概要を提供することである。また、最新のメタアナリシスにより現在のエビデンスを更新する。 デザイン: アンブレラレビュー。
【方法】PubMed、EMBASE、Web of Science、Cochrane database of systematic reviews、Epistemonikos、SPORTDiscus、Clinicaltrials.gov、PROSPERO registerをデータベース開設時から2021年8月まで検索した。対象はこの検索で抽出された RCTおよびRCTサンプルの査読付きsystematic reviewおよびメタ解析である。最新のメタ解析における95%CIを伴う相対リスクの算出にはランダム効果モデルを用いた。対象群は通常の妊娠管理を受けた群とした。質の評価にはAMSTAR 2とCochrane Collaborationツールを用い、エビデンスの総合的な確かさの評価にはGRADEアプローチを用いた。運動は、その強度を問わずあらゆるタイプの運動プログラムを対象としたが、メタ解析に栄養学的または行動学的要素を追加介入した研究が含まれる場合は、運動のみの介入を行ったRCTからの情報のみを抽出した。 主要評価項目はGDMおよびHDP相対リスクとした。
【結果】解析には23のsystematic reviewとメタ解析、63のRCTが含まれた。妊娠中の運動は、ほとんどのシステマティックレビューおよびメタ解析においてGDMおよびHDPの発生率を減少させた。 GDMについてのsystematic reviewとメタ解析では、13の研究で運動による発症率低下が認められ、7つの研究で効果が認められていなかった。最新のメタ解析では、35のRCTについてGDMの発症率が有意に低下していた(pooled OR 0.61; 95%CI 0.51-0.74)。サブ解析では、妊娠初期に開始された場合、運動強度が低~中等度の場合、中等度の場合で有意に発症率の減少効果があった。運動時間が長い方がGDMの発症率を有意に低下させるというわけではなかった。 HDPについては、8件のsystematic reviewとメタ解析で評価された。全ての検討でHDPとGHの発症率減少か報告されたが、妊娠高血圧腎症(P E)の発症率は発症率についての結果はさまざまであった。最新の28のRCTを用いたメタ解析では、運動はGHの発症率を減少させたが(OR 0.53;95%CI 0.40-0.71)、PEの発症率は減少しなかった(OR0.81;95%CI 0.61-1.07)。サブ解析では、BMIで分類したすべての階層の女性、運動セッションか45分より長い場合、妊娠初期〜中期で運動を始めた場合、指導のもと行った運動、運動強度が軽度から中等度、または中等度の場合にGHの発症率が減少していた。PEは妊娠初期に始めた場合にのみ減少した。
【結論】今回の結果から、妊産婦の転帰を改善する効果的な戦略として、妊娠中の運動介入を推奨することができる。
【参考文献】
1) 妊婦スポーツの安全管理基準.日本臨床スポーツ医学会誌 2005;Vol. 13 Suppl., https://www.rinspo.jp/files/proposal_11-1.pdf
【方法】PubMed、EMBASE、Web of Science、Cochrane database of systematic reviews、Epistemonikos、SPORTDiscus、Clinicaltrials.gov、PROSPERO registerをデータベース開設時から2021年8月まで検索した。対象はこの検索で抽出された RCTおよびRCTサンプルの査読付きsystematic reviewおよびメタ解析である。最新のメタ解析における95%CIを伴う相対リスクの算出にはランダム効果モデルを用いた。対象群は通常の妊娠管理を受けた群とした。質の評価にはAMSTAR 2とCochrane Collaborationツールを用い、エビデンスの総合的な確かさの評価にはGRADEアプローチを用いた。運動は、その強度を問わずあらゆるタイプの運動プログラムを対象としたが、メタ解析に栄養学的または行動学的要素を追加介入した研究が含まれる場合は、運動のみの介入を行ったRCTからの情報のみを抽出した。 主要評価項目はGDMおよびHDP相対リスクとした。
【結果】解析には23のsystematic reviewとメタ解析、63のRCTが含まれた。妊娠中の運動は、ほとんどのシステマティックレビューおよびメタ解析においてGDMおよびHDPの発生率を減少させた。 GDMについてのsystematic reviewとメタ解析では、13の研究で運動による発症率低下が認められ、7つの研究で効果が認められていなかった。最新のメタ解析では、35のRCTについてGDMの発症率が有意に低下していた(pooled OR 0.61; 95%CI 0.51-0.74)。サブ解析では、妊娠初期に開始された場合、運動強度が低~中等度の場合、中等度の場合で有意に発症率の減少効果があった。運動時間が長い方がGDMの発症率を有意に低下させるというわけではなかった。 HDPについては、8件のsystematic reviewとメタ解析で評価された。全ての検討でHDPとGHの発症率減少か報告されたが、妊娠高血圧腎症(P E)の発症率は発症率についての結果はさまざまであった。最新の28のRCTを用いたメタ解析では、運動はGHの発症率を減少させたが(OR 0.53;95%CI 0.40-0.71)、PEの発症率は減少しなかった(OR0.81;95%CI 0.61-1.07)。サブ解析では、BMIで分類したすべての階層の女性、運動セッションか45分より長い場合、妊娠初期〜中期で運動を始めた場合、指導のもと行った運動、運動強度が軽度から中等度、または中等度の場合にGHの発症率が減少していた。PEは妊娠初期に始めた場合にのみ減少した。
【結論】今回の結果から、妊産婦の転帰を改善する効果的な戦略として、妊娠中の運動介入を推奨することができる。
【参考文献】
1) 妊婦スポーツの安全管理基準.日本臨床スポーツ医学会誌 2005;Vol. 13 Suppl., https://www.rinspo.jp/files/proposal_11-1.pdf
(文責:川端伊久乃)