文献紹介のページを更新いたしました(2024年9月掲載)
白血球テロメアの長さの短縮は多発性硬化症の産褥期の再発に関連している
Key Point
テロメアとは染色体の末端部のことで、特定の塩基配列の反復とタンパク質から成る構造物であり細胞分裂をするたびにテロメアは短くなる、つまり加齢に伴うテロメア長の短縮は、生体の寿命にも関連しており、白血球テロメア((Leukocyte telomere length:LTL)の長さから老化の程度が判ると考えられている。LTLは、生物学的老化のバイオマーカーとして、寿命や加齢の予後予測因子として様々な分野で検討されているがまだ結論は出ていない1)。MS患者のLTLに関する研究では、再発寛解型MSと比較すると進行型MSではLTLが短縮していることから身体障害進行の指標の一つとされている2,3)。MSのLTLと妊娠に関して、妊娠歴は、MSの進行抑制に影響するが4)、この効果が加齢機序なのか、LTLに関連しているのか、研究がおこなわれている5)。また、MS合併妊娠では妊娠中は疾患活動性が安定し再発しなくなるが、産褥期は疾患活動性が高くなり再発しやすい。この研究では、LTLにおけるMSの妊娠周期と疾患活動性活性との関連を検討しており、その結果、妊娠から産褥期まで、LTL短縮が認められ、MSの産褥期の再活性化(再発)に関連していることが明らかとなった。この結果からMSの疾患活動性の安定化、産褥期の再発抑制が患者予後に重要であることが示唆される。