文献紹介のページを更新いたしました(2024年3月掲載)
全身性強皮症の活動性に妊娠は影響を与えない
Key Point
全身性強皮症は、全身性に膠原線維の沈着により皮膚硬化のみならず肺・腎・消化管など多臓器病変が引き起こされる自己免疫疾患の1つである。女性では50歳代の発症がピークであるが妊娠可能である年齢20~44歳の発症が9.8%(942/9630例)を占めている1)。全身性強皮症合併妊娠の統計的レビュー2)では、健常対照群と比較して、流産(OR 1.6、)、子宮内発育遅延(OR 3.2)、早産(OR 2.4)、低出生体重児(OR 3.8)のリスクが高いことが示された。全身性強皮症患者は対照群と比較して、妊娠高血圧症候群(OR 2.8)を発症する確率が2.8倍高く、帝王切開分娩の確率(OR 2.3)が高かったと報告している。これまでの研究では、妊娠中および産後短期間の疾患活動性に焦点が当てているが、妊娠が疾患に対して長期的な全身性強皮症へ影響を与えるかについて検討された報告はない。本報告は、全身性強皮症合併妊娠と未産婦を9年間にわたり臓器病変の評価し、比較検討した結果、2群間に有意差はなく妊娠が全身性強皮症の活動性に影響を与えないと報告している。全身性強皮症患者に希望を与えるメッセージとなるが、9年後の妊娠群の症例数が少ないためか、今後も分娩後の活動性に注意が必要であるとも締めくくられている。