文献紹介のページを更新いたしました(2023年9月掲載)
抗リン脂質抗体症候群の分類基準が約20年ぶりに改訂 ~2023 ACR/EULAR 抗リン脂質抗体分類基準~
Key Point
約20年ぶりに抗リン脂質抗体症候群(APS)の分類基準が改訂されました。従来の基準(2006年Sapporo基準シドニー改変)と異なり、臨床症状と検査結果がそれぞれ6つの臨床ドメインと2つの検査ドメインとして点数化され、臨床と検査、それぞれの領域のスコアの合計が3点以上となった時にAPSと分類される仕組みになっています(表)。この基準は、あくまで観察研究や臨床試験で使用するために作成されたものであり、臨床現場での治療適応の判断にそのまま適応される訳でないことに注意が必要ですが、特に周産期領域においては、もともと非特異的とされていた習慣流産に対する重みづけが小さくなった一方、抗リン脂質抗体の作用として特異性の高い重症の胎盤機能不全や重症妊娠高血圧腎症の存在に重きをおいている点で、より特異性の高い分類基準となっています。また分枝状皮斑などの微小血管障害や血小板減少、心弁膜症といった、血栓症・産科合併症以外の多彩な臨床症状が臨床ドメインに追加されたことも大きな変更点といえるでしょう。今後はこの分類基準をいかに臨床現場に生かしていくか、その検証が行われていくと考えられます。